【コーヒー生産者STORY part8】仲買人はつらいよ。
どもっす!
言葉の中に英語とラオス語がごちゃ混ぜのいーちぇです。
お待たせしております。
コーヒー生産者STORY part8 スタートです!
仲買人・トンさん
今回お話しさせてもらったトンさんとその奥さん。
3haもの農園を持っています。
しかし、トンさんは組合には参加していません。
それどころか、どちらかと言うとコーヒーを買う側。
トンさんは仲買人なのです。
仲買人って?
仲買人とはどういう人なのでしょうか。
このラオス南部のコーヒー生産地における仲買人とは、コーヒー生産者からコーヒー(主に加工していないチェリー)を買い取り、それをコーヒーを欲している企業などに売る人のことです。コーヒーを買った価格より高値で企業に売ることで、利益を得ています。
コーヒーやフェアトレードについて詳しい人は、仲買人に対して良いイメージをもっていないかもしれません。立場の弱いコーヒー生産者からコーヒーを安値で買い叩いている悪い人、と思われているかもしれませんね。
そのような場合もあるのかもしれません。
しかし、このラオスにおいて仲買人は決して悪役とは言えません。
その理由は、仲買人のコーヒーの買取方法にあります。
JCFCの組合の買取方法から説明すると、組合がコーヒーに対して支払うのは年に一度きり(前払いによって2回のことも)。一度に大量のお金が、コーヒーを売った後の1月頃に入ってくることになります。
そのため、収入は1月まで待たなくてはなりません。
それに対して、仲買人はコーヒーを売ったとき、その場で支払いをします。
そのため、コーヒー生産者はチェリーがとれる9月頃から、チェリーが収穫できれば毎日でも仲買人にコーヒーを売って現金を手に入れることができるのです。
ただ、販売する量は少量になり、チェリーから加工もしていないため、値段は低くなります。
さて、もし家計が厳しく、今すぐにでも明日の食費を手に入れたいというときに、助けとなるのはどちらでしょうか?
そう仲買人なのです。
このような理由から、この地のコーヒー生産者にとって仲買人とはなくてはならない存在となっているのです。
仲買人の仕事
仲買人が買い取るのは主にコーヒーチェリーです。
買取は9月頃からスタート。
その時の価格は 1,000 kip/kg だそう。
買取価格が最も高くなるのは、収穫シーズン最中の12月頃。
売り先の企業が買い取ってくれる価格によりますが、去年は 3,500 kip/kg だったそうです。
10月の時点ですでに集められていたチェリー
このことから分かるのは、仲買人に販売すると、最大で3,5倍以上の価格の変動があるということ。
組合にコーヒーを売るとしたら、このようなことはないでしょう。
しかし、同時に9月のタイミングで現金を手にしたいコーヒー生産者がいるということもわかりますね。
ほかに、トンさんにインタビューをして興味深かったのは、彼の家庭の支出項目。
家計調査をすると、普通のコーヒー生産者と大きく異なるということが分かります。
例えば、仲買人は電話でコーヒー生産者と買取のタイミングを相談します。
何人もの人と電話をするため、電話代はとても高額になります。
また、トラックを使ってコーヒーチェリーを運ぶので、ガソリンも普通の生産者の何倍も購入しています。
仲買人になったワケ
どうして仲買人になろうと思ったんですか?
自分が育てているコーヒーによる収入の他にも稼ぎが欲しかったからさ。
2010年から始めたんだ。
仲買人とは、生まれながらにしてなるものではありません。彼の場合もそう。
彼の父親はコーヒー栽培しかしておらず、仲買の方法も分かりませんでしたが、トンさん自身の意欲によって仲買人になることを決意しました。
しかし、仲買人として仕事をするのは簡単なことではありません。
そこには大きなリスクが存在します。
トンさんは、昨年コーヒーを買い取る前に 2億 kip(約250万円) を用意したそう。
そして、このお金でコーヒーチェリー300tを買い取り、企業に販売して利益を得ました。
しかし、企業に売るまでは、自分のリスク。
大金を用意しておきながらコーヒーを買って売ることができなければ大きな損失となります。
個人でするビジネスながら、取り扱う金額は大きい。
なまはんかな気持ちではできない仕事です。
仲買人の大変さ
仲買人をしていて、何が難しいと感じますか?
理解され難い役割ってことかな。
どうやら仲買人というは立場上、難しい仕事なのだそう。
例えば、トンさんが売り先の企業に10.5kgのコーヒーを持って行ったとしましょう。
そうすると、その企業は10 kgぶんの代金だけ支払って、0.5kgのコーヒーを手間賃としてタダでもらおうとするらしいのです。
その度に、トンさんは売り先の企業と話し合わないといけません。
そのことに対して、毎回トンさんは腹を立てているとのこと。
しかし、その怒りを爆発させることはできません。
コーヒーを買ってもらえなくなると、トンさん自身が困るからです。
それは相手の企業にとっても同じことで、コーヒーを売ってくれる仲買人がいなくなっては商売ができません。
なので、お互い相手のことを悪く思っていても、妥協せざるを得ないというのです。
そして、その状況はトンさんとコーヒー生産者との間にも起こります。
売り先の企業に手間賃としてコーヒーがタダで持っていかれてしまうリスクを考慮して、今度はトンさんがコーヒー生産者が持ってきたコーヒーの端数の支払いを拒みます。
しかし、もちろんコーヒー生産者は、その端数もしっかり支払ってもらいたいのです。
トンさん曰く、仲買人は企業とコーヒー生産者から、簡単な仕事をして楽に稼いでると思われるそう。
しかし実際には、企業とコーヒー生産者の板挟みにあっている、大変な仕事なのでした。
自慢げに見せてくれた買い取ったチェリー
まとめ
今回は仲買人という、コーヒー生産者とはまた違う立場の人の話を聞くことができました。
しかし、彼もこのラオス南部の地で生活してるラオス人の一人なのです。
そこには、トンさん自身のストーリーがあります。
今回、トンさんにインタビューできたことは、ラオスのコーヒー生産者を取り巻く関係を知る上でとてもいい機会となりました。
それではまた!